家族のトラブルを装って電話をかけ、金をだまし取る「おれおれ詐欺」がますます巧妙、変則化している。当初は子や孫になりきり、親や祖父母に泣きついて送金してもらう単純な手口で、「おれおれ詐欺」のネーミングとなったが、手口は次第に多様化。家族が交通事故を起こしたとして、被害者、警察官、弁護士が入れ代わり立ち代わり電話口に現れ、早急な示談を迫る「劇団型」が今や主流で、医療ミスの示談金名目や台風、地震、倒産話まで悪用するなど「なりすまし」の手口は大掛かりに。被害(警察庁調べ)は今年一―九月で一万一千件以上(未遂含む)、総額百二十九億円余りに上り、増加の一途をたどっている。だましのテクニックを撃退する手だてはあるのか?(社会部 中川佳男、広畑千春) 個人情報下調べ/事前に綿密脚本 おれおれ詐欺が各地で相次ぐようになったのは、二年ほど前から。兵庫県内では全国的に急増した昨年三月ごろ、初めて被害が確認された。未遂も含め、今年二月以降は毎月二十件以上を数え、八月は七十一件に上った。この数字は近畿二府四県でも際立って多い。 警察庁のまとめでは、金銭を要求する名目は、交通事故の示談金が約六割。借金返済が約三割、妊娠中絶費用と続く。最近は手口の多様化、巧妙化が目立ち、電話の向こうでパトカーのサイレンを鳴らすなど、効果音を用いた“演出”まで出てきた。 十一月二十四日には、医療ミスに絡み示談金を要求するという新手の手口が登場。医師の長男の医療ミスで患者が死亡した、という電話を受けた神戸市内の主婦が、一千万円をだまし取られた。泣きながら電話をしてきた長男役に、医師免許のはく奪の可能性を示唆する院長役。さらには示談交渉に当たる病院、患者遺族双方の弁護士役など実に五人が、医療ミスというストーリーを電話の向こうで演じた。 この主婦を含め被害者は四十代から六十代を中心に、76%が女性という。 兵庫県警などによると、医療ミスを利用したグループのように、犯人側は事前に綿密な「脚本」を用意。相手を追い詰めるのに効果的な話術など「だましのテクニック」を研究しているとみられる。 金融機関の窓口が開いているうちに金を振り込ませようと、電話は平日の正午前後に集中。電話帳で高齢者に多い名前を選んだり、事前に学校の卒業名簿などを入手、個人情報を下調べするなどの実態も明らかになっている。 犯行に
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